コンサルティング会社にいた頃(1998〜2003年にかけ、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントおよびKPMGコンサルティング)は、既に企業側が作成した事業計画をもとに業務改革やシステム導入のコンサルティングをすることがほとんどで、事業計画作成そのものを支援することはありませんでした。
私が事業計画作成を初めて支援することになったのが、2003年に独立して2年目(2004年)に不動産関連のP社さんからのご依頼がきっかけでした。
P社さんは大手不動産賃貸仲介会社のFC(フランチャイズ)に加盟し、関西を中心に6店舗ほど展開しておられ、オーナーであるM社長(※)から「これまで何度となく事業計画を書こうとしたが、途中で行き詰まり、結局完成しなかった。専門家の支援を受け、今回は何とか完成させたい」というご依頼でした。
訪問初日に、書きかけのままとなった事業計画をいくつも見せて頂きました。
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まったくの偶然ですが、私がヤンマー(株)(当時ヤンマーディーゼル(株))で働いていた頃、自己啓発のためグロービスの経営戦略コースに半年間通ったのですが、その時にM社長と同じクラスでした。M社長も私も当時のことはすっかり忘れていたのですが、私が長崎の自宅に帰省した際、以前の名刺を整理していたら、M社長のお名刺を見つけた次第です。M社長にグロービスのお話をしましたら、思い出して頂けました。 |
M社長とM社長の右腕、左腕であるT部長とS部長と一緒に数ヶ月かけ事業計画を作成し、決算である同年11月末に完成させました。新しい期に入った12月初旬に、同社の近くの貸し会議室に全社員約30名に参集頂き、「事業計画説明会」を開催しました。
以来、4年ほど年間を通じて、接客水準の向上や店長の育成といった人材育成や業務改善の支援をしつつ、毎年夏から秋にかけて、同社の事業計画の練り直しを支援させて頂きました。
ちなみに、初年度(2004年)はA4横サイズで作成したのですが、社員の皆さんが机の中にしまい込んでしまい、業務上あまり事業計画を活用しない(見てくれない)という反省のもと、次の年はB6縦サイズのリングファイル式で差し替えが可能なようにしました。しかし、リングファイル式はどうしても厚みがあるので、携帯には不便ということで、さらに次の年にはT部長のお知り合いの印刷会社で簡易製本したので数ミリの厚さとなり、無理なくスーツの内ポケットに収まるようになりました。
また、事業計画に書いた店舗毎および全社の売上目標や来店数目標を目に触れる機会を増やすため、初年度にはなかった、営業会議等の社内行事や全社員の誕生日などを記した年間カレンダーを事業計画の巻末に入れることで、社員の皆さんが事業計画の冊子を開く機会としました。

さらに初年度は経営陣からの単なる一方通行の「事業計画説明会」でしたが、次年度から敢えて店舗をまたいだ班編制とし利益や経費といった社内の様々な数字や各店舗の来店数の違いなどをクイズ形式で競い合いながら社員の皆さんに知って頂く工夫もしました。
このようにP社さんでは「事業計画を社員の皆さんがもっと身近に感じてもらうには」「事業計画を通じ、社員の皆さんに会社全体のことに興味を持ってもらうには」といった工夫を毎年重ねていきました。
これまで数多く支援させて頂いた事業計画作成をふまえ、上記の失敗案件も私自身の糧としながら、現在は以下のようなことをしっかりと確認したり、フォローしたりしながら事業計画作成を支援しております。

前述のように事業計画を作成する経営者の目的や動機は様々です。支援に先立ち、まずしっかりと作成目的や動機を確認しています。
事業計画作成には通常2〜3ヶ月かかりますので、作成目的がしっかりとしていないと、徐々に作成自体が目的となってしまうためです。
また下表に示しますように、事業計画作成目的により、必要な視点が異なってくるからです。

○月○日といった完成目標期日を着手前に明確化します。もし仮にこの日までに繁忙期が含まれているとすれば、事業計画作成に関係する社内メンバーが、事業計画の打合せや資料作成の時間が十分に取れるかを確認します。
可能であれば、毎週あるいは隔週で事業計画作成の打合せ日程を先に決めてしまい、関係者のスケジュールを確保します。

今は、どこの会社も売上減や利益減に苦しんでいますが、これまでの経営努力で、ある程度の内部留保があり、資金繰りがまわっていれば、過度に資金繰りを気にすることなく、事業計画作成に注力することができます。
しかし、月次資金繰り表や日繰り表(日次資金繰り表)を見ると、ここ半年以内あるいは1年以内に資金ショートの可能性があるとすれば、悠長に事業計画作成をしている場合でなく、企業の存続を第一目的とした「事業再生計画」を早急に作成し、実施する必要があります。

社員数名の小規模企業は別として、事業計画を作成する場合、基本的に経営者だけでなく、複数の主要な社員数名といっしょに作成することをお勧めします。
単に社内のいろいろな人の意見を聞くということが目的でなく、社員の皆さんそれぞれが、この会社をどんな会社にしたいという過程が大切だからです。
事業計画のボリューム(資料の量)にもよりますが、作成段階で社内のいろいろな人に手伝ってもらうとしても、準備段階で「事業計画作成メンバーは、社長とA部長、B課長、C課長の計4名」と明確にします。

事業計画作成では文章関連をワード等の文書作成ソフトで、財務計画をエクセル等の表計算ソフトで作成することが一般的なパターンです(もちろんパワーポイントといったプレゼンソフトを使うこともあります)。
エクセルのマクロ機能といった高度な操作は必要ありませんが(ちなみに、私はマクロは出来ません。。。)、上記の作成メンバーが、このようなソフトを基本的に操作できるかを確認する必要があります。もし難しいようであれば、操作できるメンバーを加える方が作業が効率的に進みます。
事業計画は資料作成が目的ではありませんが、資料ができないことにはゴールに至りませんので、このような確認も必要です。

事業計画が完成した後、社内外にどのような方法で伝えるのかを、早期に明確にします。
例えば、社内であれば、完成数日後に「事業計画説明会(あるいは発表会)」と称して、基本的に全従業員に集まって頂き、2〜3時間程度、しっかりと説明します。
取引金融機関などの社外に対しては、完成後に、事前連絡の上、支店に持参します。この時、できれば融資担当者だけでなく、より上席の次長(小規模な支店であれば支店長)に同席を願い、事業計画をもとに今後の経営目標を具体的に伝えることで、今後の円滑な融資につなげます。金融機関は、このような企業の姿勢を歓迎します。

事業計画は「絵に描いた餅」ですので、実行してナンボです。
事業計画の後半に「具体的な行動計画」あるいは「業務改善項目一覧」と称した「いつまでに、誰が、何をやる」ということを明記したページを盛り込みます。

作成メンバーにとって事業計画作成は非日常業務ですので、急ぎの顧客対応などの日常業務が優先となり、「次回の事業計画作成打合せまでに、A部長は○○の資料を作成頂き、B課長は△△の資料を作成お願いします」と決めたところで、遅れがちです。
そのような遅れに対し、どうすれば全体としての完成目標期日に遅れることなくリカバリ可能かを一緒に考えます。